新型コロナウイルスは今年中に収束するか? 2022年最新予想

はじめに

新型コロナウイルスは2019年12月中国・武漢で最初の感染者が報告され、2020年1月以降は世界中に感染が拡大し、パンデミックと呼ばれる状況となりました。日本で最初に新型コロナウイルス感染症の発症が確認されたのは2020年1月。その後の感染急拡大により政府から外出自粛を呼びかける緊急事態宣言が発出されたのが2020年4月でした。新型コロナウイルス感染症の最初の流行から3年目に入った2022年4月現在時点での収束の見通しについて、3つの観点から収束時期を予測しました。

予想1:オミクロンで収束し、第7波は来ない


2022年初めから流行した新型コロナウイルスの変異型のオミクロン株の特徴から収束の方向へ向かっているとする見方があります。オミクロン株は感染しやすいですが重症化しにくくなり、これまでの新型コロナウイルスより致死率が下がりました。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(感染症対策の専門家集団)が作成した資料で「オミクロン株による新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの比較に関する見解」(2022年3月2日)が提出されました。資料では新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの共通点と相違点、致死率がまとめられています。

共通点はいずれも肺炎を引き起こすこと、小児や青壮年では比較的予後が良いこと、短期間で感染者が発生し、軽症・無症状者が多く、感染者の全数を把握できないことです。

相違点は季節性インフルエンザは変異の予測がつきやすく、流行株について免疫をつけやすいですが、新型コロナウイルスは流行株から大きく変異することから、自然感染やワクチン接種による免疫による発症予防効果が限定的であることです。新型コロナウイルスは症状が落ち着いた後の再発や後遺症がみられること、軽症・中等症者への治療薬が開発されていないことが挙げられます。

致死率は季節性インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症ともに無症状者、軽症者が感染者として数値に入っていないこと、異なる感染症間の比較は難しいことから暫定的データとして、症例致死率は季節性インフルエンザでは0.010%~0.052%(2018/2019シーズンの超過死亡率より計算)、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症では約0.13%とされています。

総合すると依然として新型コロナウイルス感染症のリスクが高いですが、オミクロン株はインフルエンザウイルスと比較できる変異ウイルスであったことから、これまでの新型コロナへの対策から潮目が変わったとする見方もできます。

オミクロン以降の変異型であるオミクロン株「BA.2」の感染者が増え、新たな変異株「XE」も見つかっていますが、感染者が重症化せず致死率が下がっていくのならば、医療逼迫しないので、徐々に通常の生活に戻っていくと予測されます。


予想2:収束の見通しは立たない


新型コロナウイルスは変異を続けています。日本での第6波の流行は2022年1月初旬から感染者が爆発的に増加しました。まん延防止等重点措置は3月21日に全ての都道府県で終了しましたが、2022年4月上旬現在、感染者は再拡大の傾向にあります。

第6波では新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株が流行しましたが、現在はオミクロン株の変異型であるオミクロン株「BA.2」への感染者が増加傾向にあり、新たな変異株「XE」も出現しています。このことから第6波が完全に収束する前に感染が拡大し第7波へ向かうことも専門家の間では予測されています(第79回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2022年4月6日)より)。

2021年初夏から秋にかけて感染拡大したデルタ株の感染者が9月下旬から急激に減少したのは、新型コロナウイルスワクチンの2回目接種が進んだことが理由として指摘されています。しかし、2022年1月から始まった第6波では新型コロナウイルスへの感染がデルタ株からオミクロン株に置き換わり感染予防効果は下がりました。

第6波ではワクチン未接種、あるいは接種率の低い10~30歳代前半の若年層の感染者が多く、周囲に感染を広めやすい一方で、若年層では重症者リスクが低く無症状者の割合が高いため、全世代に感染が拡大しました。重症化率は低いとされながらも、全体の感染者数が増加し、追加接種(ブースター接種)が第6波の流行までには間に合わなかったことから、これまでの新型コロナ流行期のなかでは最大の感染者数と死者数を記録しました。

新型コロナウイルスはオミクロン株は重症化リスクが比較的低い変異株であったものの、今後の変異株は重症化しやすく感染しやすい株に変異する可能性がないとはいえません。ワクチンや治療薬の開発は現在も行われていますが、軽症や中等症に対する有効な治療薬はまだありません。また、新型コロナウイルスは変異しやすいことから、ワクチン接種で新型コロナウイルスの重症化は防げても完全に予防することはできません。こうした事実から新型コロナウイルス感染症の終息は中長期的にみたほうがよいと考えます。


予想3:今年中あるいは来年中には収束する


第6波のオミクロン株が従来の株に比べて重症化しにくかったのは、新型コロナウイルスのワクチン接種済みの人が多かったことや、これまでの感染拡大により市中感染が拡がり集団免疫を獲得しつつあるという考え方もあります。オミクロン株以降に出現した変異株はオミクロン株の変異株「BA.2」と新たな変異株「XE」ですが、これら変異株の感染力の高さや重症化率については未知数です。

収束するためには新型コロナウイルスの重症化を抑える治療薬の開発が不可欠です。現在は重症化リスクの高い患者に対する重症化予防の治療薬は使用されていますが、重症化リスクのない軽症者や無症状の患者への治療薬はありません。

また、新型コロナウイルスワクチンは従来株に対して一定の効果があり重症化を抑えられましたが、今後はより副反応が少なく、変異株に対しても有効性のあるワクチン開発が求められます。

現在国内承認されている新型コロナに対する経口抗ウイルス薬はモルヌピラビルとニルマトレルビル・リトナビルです。

モルヌピラビルは発症から5日以内の重症化リスクのある軽症~中等症の18歳以上の患者に対して使用されます。ニルマトレルビル・リトナビルは重症化リスク因子がある軽症~中等症の12歳以上の患者に対して使用されます。

今後、重症化リスクがなくとも発症した人に投与できる治療薬の開発が望まれています。収束の時期は治療薬の開発の時期と普及にかかってくると考えられ、現在も世界中で研究開発が進められているため、今年中~来年中に徐々に収束するという見方もできるでしょう。

【監修・執筆】磯和 剛平

〇病院名 :医療法人 いそわクリニック 〇医師  :磯和 剛平 〇アクセス:寝屋川市駅より徒歩15分 〇診療科 :内科・胃腸科・外科 〇経歴: 1974年 大阪府立北野高校 卒業 1981年 京都大学医学部 卒業 1989年 京都大学 大学院 卒業・博士号修得 テーマ:肝細胞癌における遺伝子修復酵素の研究 1981年 京都大学医学部附属病院外科研修医。 公立甲賀病院、都志見病院、医仁会武田総合病院で外科医として勤務 腹部一般外科、救急医療を中心に診療を行った。 都志見病院では、5年間にわたり、上部・下部消化管内視鏡(胃カメラ・大腸ファイバー)ERCP、 内視鏡的食道静脈瘤硬化術などの消化器内科診療や、糖尿病内分泌疾患、循環器疾患、呼吸器疾患 などの内科診療を広範囲に行った。 1996年12月 いそわクリニック開業

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